GOLDEN BOY

 1992年のことでした。青山劇場(他に名古屋、大阪)で上演のミュージカル『GOLDEN BOY』に、トキオという役で出演しました。

 悲劇のボクサー、主人公のジョーを演じたのは、ジャニーズ事務所所属で、当時、絶大な人気を誇った諸星和巳さん。トキオは、ジョーのトレーナーで、一番の理解者という重要な役どころです。

 書架で埃をかぶっていたパンフレットによると、東京公演は5月29日から6月14日。だから、26年前の今頃は、連日、稽古だったはず。

 稽古場は、当時、居のあった中央区のマンションから、新大橋を江東区へ渡るとすぐのベニサンスタジオ。

 五月晴れでした。隅田川の川面の反射を受けながら自転車で通った記憶が蘇ります。稽古が終わると、近くの煉瓦亭のビーフカツやポークソテーで、満腹になって帰りました。

 しかし、あらためてパンフレットの写真を眺めると、ボクシングのトレーナーの顔ではありませんねえ。

 青山劇場では、シャワー付きの広い楽屋があてがわれました。

 いただいた胡蝶蘭やメロンやワインが、姿見を囲むライトに照らしだされ、銀座のショーウィンドウのようでした。ソファーには、モデルやサッカー選手の友だちが集まりました。そういう時代でした。

 一方で、マチネ(昼公演)と、ソワレ(夜公演)の合間には、化粧前(メイク用の鏡の前)での読書が楽しみで、三島由紀夫の『豊饒の海』全巻を読了したのもここでした。今ならノートパソコンを持ち込み、スマホをいじっていたでしょう。

 ジョーとタイトルを争うボクサー、ミッキー役は、TOKIOの城島茂さんです。私は28歳。諸星さんと城島さんは、弟と同い歳なので21歳。TOKIOの他のメンバーも出演していました。

 そのTOKIOの楽屋でした。出演者は、私のことを役名のままトキオさんと呼んでいましたので、それを受けて、メンバーの誰かが、場を和ますように

「トキオさんと、TOKIOじゃ紛らわしいですね」

と、笑いました。楽屋の明かりに浮かぶ、若者たちの横顔が、明け方の夢のように蘇ります。

 笑ってばかりだったような気がします。でも、記憶の淵を掘り起こすと、泣いたり、怒ったり、傷つけたり、戸惑ったりと、東京での四半世紀のおりが浚い出されるのです。

Site Hiroyuki Tateyama

演出家 竪山博之(たてやまひろゆき)のサイトです。 舞台や、映像、ラジオ番組、コンサートを制作したり、 芸術について話したり、脚本を書いたり、俳優を育てたりしています。 Hiroyuki Tateyama, stage theater producer, organaisez le producteur de theatre.

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