『かぞくいろ』言葉に敏な映画…。
初の鹿児島弁指導は、東南アジアの農業研修生を鹿児島に受け入れる青年役で出演した『南の家族』という、TBSのテレビドラマでした。1987年、佐藤信二という役名を今でも覚えています。
当時のテレビ業界は、まだ方言指導という役割が確立しておらず、鹿児島出身だからと、主役の一人、奈良岡朋子さんに、鹿児島弁を教えてくれと依頼されてのことでした。
鹿児島弁に直したセリフを、棒読みにして、テープに吹き込みました。棒読みは、奈良岡さんの役作りを邪魔しないためです。(感情を入れて吹き込んでくれという俳優もいます)
全国放送ですから、鹿児島独特の言葉は避けました。それでも鹿児島弁の難しさに、名優奈良岡朋子さんが、"四苦八苦"されたことを記憶しています。私も若かったのと、そもそも自分の役の台詞が多かったので、十分にお手伝いできたか疑問でした。
今年のNHKの大河ドラマ『西郷どん』は、古い鹿児島弁、つまり台詞は薩摩弁です。その薩摩弁に俳優たちが、"七転八倒"し、指導する迫田さん、田上さんは、俳優を苦しめる大悪党になっていると、おもしろおかしくお話くださったのは、『西郷どん』で山田為久役を好演の徳井優さん。某映画の現場でのことでした。
ところで、方言指導は、むしろ、標準語力が問われます。文脈を変えてはいけないからです。また、どこの方言も同様かと思いますが、鹿児島弁も、出自で発声やアクセント、言葉遣いが変わりますから、そういう知識も必要です。
役に応じて、言葉やその抑揚を的確に選び、時に、監督に、鹿児島独特の表現を提案するのが、方言指導の仕事です。
全ての英国人が、英語教師にはなれないように、全ての鹿児島県人が鹿児島の方言を教えられるわけではないのです。
ご当地映画が増えて来た昨今、適当な方言指導でお茶を濁す作品が増えていることを憂えています。
そんな中、『かぞくいろ』は、脚本家でもある監督、俳優をはじめ、スタッフ全員が、鹿児島弁を大事にして作られました。
「鹿児島のお客さんに、木下は、鹿児島出身なの?と、思われたいんですよ」と、熱心だったのは、舞台となる肥薩おれんじ鉄道の職員・相葉雅樹役の木下ほうかさん。
鹿児島を、そして鹿児島弁を大切にする『かぞくいろ』を、お勧めします。
(『かぞくいろ』は、鹿児島では11月23日に公開。上映全館で舞台挨拶があります。全国公開は11月30日です。)
肥薩おれんじ鉄道の車両内の写真中央は國村隼さん、その右で、ヘルメットに手を当てているのは𠮷田監督。國村さんと𠮷田監督の間のメガネかけが筆者。
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