ピザの味

 1975年頃、私は小学生、弟はまだ幼稚園に上がる前だ。珍しいものを食べたいと言ったんだと思う。父に連れて行かれたのは、鹿児島の繁華街、天文館アーケード内の地下のレストランである。そこで、初めてピザを知った。何故か母はいなかった。

  次に思い出すのは、ニューヨークのピザ屋だ。店頭のガラスケースに、すでに焼かれた何種類かのピザが並んでいて、一切れだけでも買うことができた。

 マイケル・J・フォックスの映画のワンシーンにもあったが、私も一切れのピザを、コーラで流し込んで、空腹を満たしたことがある。ニューヨークの音、例えば、救急車のサイレンの音とともに蘇る記憶だ。

 バブル景気の頃、東京では、ピザの宅配業を始めた社長が、ビジネス雑誌の表紙を飾ったりしていた。色々な宅配があった。フィッシュ&チップスに、パエリアや釜飯まであった。味はどこもまあまあだった。

 そして、今、また鹿児島でピザを食べている。

 場所は変わったが、1975年に食べたのと同じ店である。子どもは、いつものピザを注文するとiPhoneのゲームに興じだした。

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演出家 竪山博之(たてやまひろゆき)のサイトです。 舞台や、映像、ラジオ番組、コンサートを制作したり、 芸術について話したり、脚本を書いたり、俳優を育てたりしています。 Hiroyuki Tateyama, stage theater producer, organaisez le producteur de theatre.

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